責任者あいさつ

内科医を志すみなさんへ

内科医を志すみなさん、ようこそ当科のサイトへ。そして、ようこそ内科学の世界へ。内科学は医学の本流であり、その魅力には語りつくせぬものがあります。

数ある内科学の魅力のなかでも、私がみなさんにまず伝えたいものが3つあります。ひとつはサイエンスとしての内科学、次にアートとしての内科学、さらに医療の主催者としての内科学です。

1.EBM~サイエンスとしての内科学
医療には、サイエンスの側面と、アートの側面が存在すると言われています。サイエンスの側面を最も良く体現している潮流がEvidence based medicine (EBM) です。しかし、EBMは未だ発展途上のシステムであり、現時点では常に正しく理解され、利用されているとは言えません。このシステムを理想的に具現化させるには、臨床判断学および臨床統計学の発展と、これらに対する個々の医師の深い理解が必要です。
内科は医療界において最も早くからEBMが浸透した科です。当然、学ぶべき疫学研究の題材は多く、臨床研究論文の読解に必要な知識を擁する先輩も数多くいます。よって、医療のサイエンスの側面を学ぶために、内科学は非常に優れた機会を提供してくれます。


2.問診技術~アートとしての内科学
他方、得られた医学知識を患者に還元するために、必要不可欠な技術の洗練はアートです。アートの側面は大変に深遠であり、習得には謙虚、誠実、勤勉を欠かすことができません。
問診技術や理学的診察法は全ての医師に共通するアートです。これらは一見初歩的作業のように思われがちですが、実は極め尽くせぬほど深遠なものでもあります。そして、その技術を最も重要視しているのは内科学です。
発症したその日の夜、何が起きたのか?どんな風にして異状に気がついたのか?本当に患者が苦痛に思っていることは何なのか?どんな変化が、患者に救急車を呼ばせたのか?何かの理由で話していない、重大な情報があるのではないか?…考えるべきことは山ほどあります。内科ではベテランになるほど問診と理学的所見を重要視します。その方が、はるかに情報量が多いからです。
こういったベテラン内科医たちのアティテュードとスキルは、書物のみからは学びがたく、間近に感じるべきものです。それは今後みなさんがどのような道に進もうとも、大きな財産になるはずです。


3.トータルマネージメント~医療の主催者としての内科学
現在の日本の医療において、最も多く望まれている医師像は何でしょうか?おそらく、単一臓器のみを治療対象とする医師よりも、患者の身体・心理を包括的に診療する、懐の深い医師でしょう。


臓器別専門分化が進む以前、この役目を果たしたのは内科医でした。内科疾患の多くが慢性である以上、内科医たちは、病める人々の人生に併走する宿命を負わざるを得ないからです。その場合、内科医と患者の間にはいくばくかの心理的紐帯が生じ、患者は健康に関するあらゆる問題を(腰痛、老眼、健康食品まで!)、まず内科医に相談するようになります。また、内科医のほうでも自分の専門領域のみに話題を限定することはできなくなるものです。こういった過程の当然の帰結として、内科医はあらゆる医療の起点となり、医療のトータルマネージメントを多かれ少なかれ手がけざるを得ません。いわば、医療の主催者です。
最近は内科の臓器別細分化が著しく、こういった魅力が薄れているように見えますが、時代はさらに変わりつつあります。限りある医療資源を有効に使用するためには、専門領域との適切な連携を持ちながら、多くの疾患を長期間一括管理する役目を誰かが果たさねばなりません。困難ですが名誉あるその立場は、内科が担うべきものです。
以上、みなさんが内科を研修する上で、学び甲斐のあるポイントを3点列挙しました。一人でも多くの若者が、わたしたちの仲間に加わり、新時代の内科学を築いてくれることを願ってやみません。


上都賀総合病院
内科部長(リウマチ膠原病内科)
花岡亮輔

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